強迫性障害を乗り越えた先に

強迫性障害が治る時、それは新たなスタートです。

心気症について、「自分は病気かもしれない!」

皆さんこんにちは、もち丸です。

最近ストレスのせいか、色々なことが気になります。自分のことでやらなければならないことはたくさんあるのですが、母の体調が思わしくないことが一番心配です。辛そうにしている家族を間近でみるのは、やっぱりキツイですね。

 

さてこの「気になる」というのは私の得意分野ではありますが、今日は体のちょっとした違和感が気になってしまう心気症についてまとめてみました。

私は長年強迫性障害に苦しんできましたが、この心気症にもかなり長い期間苦しみました。今は病的なまでに心配してしまうことは無くなりましたが、心配する傾向が強いという性格的特性はまだ残っています。今回も専門家としてではなく、体験した立場からの記事になりますので、どうぞご覧くださいませ。(約7分程の記事です)

 

 

 

1、心気症って何?

心気症とは自分の体調のちょっとした違和感を、大きな病気の症状と思ってしまい、不安で仕方なくなってしまうものです。

これだけ聞くと誰もが少しは思い当たる部分があるのではないかとも思います。特に今はコロナの影響で、体調の変化に敏感になっている人も多いのではないでしょうか。

 

症状の一例を挙げますと、頭痛があると「脳腫瘍じゃないか」、胃が痛いと「胃がんなんじゃないか」等、大病を心配してしまうケースが多いです。そして多くの場合病院で検査をしても、異常は見つかりません。

そして心気症の厄介な点は、一度医者に診てもらって安心を得たとしても、その不安と思考が何度もぶりかえすことです。これが酷くなると日常生活にも支障をきたし、病院通いを繰り返すことになります。

その意味で「強迫観念」と「強迫行為」を繰り返す、強迫性障害と似ている部分があると思います。

 

 

2、私が心配した病気

私は色々な病気を心配しました。網膜剥離、聴神経腫瘍、脳腫瘍、大腸がん、ALS、咽頭がん緑内障…ここに書けばキリがない程です。

「なんだか最近喉が痛いし声がかすれている気がする、咽頭がんじゃないか」といった具合です。

病院に行った直後は少し安心するのですが、少し時間が経つと「あの先生は見落としたんじゃないか」等、べったりとした心配がぶり返してきます。束の間の安心にしかなりません。また1番心配な病気が無くなったとしても、2番目に心配な病気が1位に繰り上がるだけの場合もあります。

一番酷い時期は毎週どこかしらの病院に行っていましたね。

 

 

3、何が苦しいのか

心気症の苦しさは「自分は病気に違いない」という思考に塗りつぶされてしまうことにあります。どうしても「自分は病気かもしれない」という考えが拭えないのです。

そして「病気に違いない」と思い込んでしまうと、冷静さを失って「自分は病気だ」という視点で情報を集めるようになる為、最早自分が病気にしか思えなくなるのです。当然集中力は落ちますし、思考も悪い方へと流れるようになります。

日常は流れていくのに、自分はそこに留まったまま動けない。やがて行動意欲も落ち、行動範囲がどんどん狭くなっていきます。

 

ただ「病気が気になる」ということは、ある意味多くの方が少しは理解出来ることでもあります。その意味で強迫性障害は多くの人に理解されにくい故の苦しみがあり、心気症は理解出来るからこそ「なんでそんなに気になるんだろう、病院で診てもらったのに」と違う意味での理解されにくさがあると思います。

 

それと私は実際に何らかの症状が見つかった経験があった為、「あの時は本当に病気だった」という経験に補強され、「今回も気にしすぎだ」と言い切れなくなりました。その為「今回病院に行かずに、病気が進行してしまったらどうしよう」と思うようにもなりました。

 

 

4、完全な健康体を望みすぎると苦しくなる

私は何か心配事があった時、その完全な状態ではない一つのことが気になって仕方なくなります。そしてその不完全たらしめている一つのことを、なんとかしたい、何とか治して一つも気になることが無い状態にしたいと強く思ってしまいます。

 

ですが年齢を重ねるほどに、何かしら気になる症状を抱えるようになるものです。子供の頃のように、体に何一つ心配が無かった状態には戻れません。その時に「諦めて受け入れる」という態度をとれないと、ずっと不満を持ったまま、健康な人をうらやんだり、自分をそういった状態に追い込んだ存在を憎み続ける事になります。

例え憎んでしまうのが無理のないことだとしても、怒りを持ち続けるのは心身にとって猛毒です。その状態で動きが鈍ると、まるで水の流れの無い濁った沼のように、心身がますます停滞していきます。そんな状態では良い出会いも生まれず、次に進もうとする前向きな思考は出てこなくなります。

 

 

5、まずは知的理解からスタート

私はパニック発作神経症、心気症、強迫性障害等に長い時間苦しみました。

そんな私にとって回復への第一歩となったものは、心気症という症状が世の中にはありそれに苦しんでいる人は多いということ、そして時間がかかったとしても、治るものだという知的理解です。

そして診察は受けたとしても一回までというような、回数制限することから始めました。これも強迫行為の軽減と似ている気がしますね。

 

最初はむしろ不安感が強まり、気になって気になって仕方ないと思います。その時に大事なのは「動くこと」です。心気症があってもやることをやれたという自信、経験を積むことです。

これが難しいというのは私も痛い程わかります。ですがその積み重ねにより、苦痛の濃度を薄めていくことは、回復にとって欠かせないと思います。

 

 

6、回復には空白の時間を作ることが大切

そして私が回復に一番大事だと思うのは、一瞬でもいいので気になっていない、症状の空白時間を作ることです。

最初は出来たとしても数秒程度かもしれません。それでも数秒でも空白時間を感じることが出来たならば、必ず良くなるはずです。それはどんなに強いとらわれの中でも、とらわれていない状態が自分にもあるという何よりの証明だからです。その数秒は数分になり、やがて気になる時間と気になっていない時間の長さが少しずつ逆転していきます。

 

私にとってその空白時間を作るのに効果的だったのは運動です。もちろん少しでも夢中になれるものであれば、なんでも構わないと思います。

ただいきなり他の人と運動をするのは、ハードルが高いかもしれません。そこで個人的にはウォーキングがお勧めです。

室内での運動もいいですが、外では風や川等自然界全てのものが流れているという感覚を肌で感じることが出来ます。というよりも自然の中に身を置くと、心が自然と流れていかざるを得ません。きっと自分の中に新鮮なものが入ってくる感覚を実感出来るはずです。

新しいものを心身に取り入れて、古いものを出していく。そんな新陳代謝のようなイメージを持って動くことは効果的だと思います。

 

 

7、心気症の人がしてはいけないこと

当時を振り返ってみて心気症を悪化させてしまった原因は、

  1. ネットで気になる症状を調べる
  2. 健康番組を見る
  3. 体を気遣うあまり行動を控える

等ですね。

 

特に1の「ネットで気になる症状を調べる」は厳禁です。本当にろくなことになりません。(笑)

ネットで「胸が痛い」とか「胃が痛い」等を検索すると、大病の検索結果が多く出てきます。それを見てしまうと「自分はその病気かもしれない」という考えに取りつかれてしまいます。

ただネットの情報って鵜呑みに出来ないものも多いんですよね。もちろん全てが嘘というわけではないでしょうが、読んだ人に不安になってもらって、「でも安心してください、うちに来れば大丈夫ですよ」といった流れに引き込もうとする記事もあると思います。やはり不安はとても強い行動意欲になるからです。

 

またテレビの健康番組に関しても、視聴者に関心を持ってもらう為に、医師の発言や番組構成を刺激的にする傾向があると思います。

そしてこれら健康情報に触れる際、自分が病気かもしれないというスタート地点から出発していますから、情報を見ても安心材料ではなく、不安材料になってしまいます。これではただでさえ医療の素人である私達が、フェアな判断をくだせるわけがありません。

 

また3の「行動を控える」ことも心気症に悪化に繋がります。もちろん行動を控えてしまう気持ちは痛い程わかります。ですが行動しないことは心身の停滞に繋がります。その意味で1日の中に短時間でも体を動かす時間を作ることは、心気症改善にとても大切だと思います。

 

 

8、最後に

私は神経症と重なってはいましたが、心気症にも10年以上苦しんできました。カウンセリングや投薬治療等、様々な治療を受けました。

ただ「体のちょっとした異常が気になる」ということは、全てがマイナス面というわけではありません。それによって健康に無頓着な人より、病気を早期発見・早期治療出来る可能性もあるからです。

その為「病気を心配してしまう状態」を0にしようとするよりも、「人よりも少し心配性というレベルまで回復すればいい」という目標設定の方が適切なような気がします。

「気になる感じを0にしようとすること」は神経症的ですし、健康について心配性な人は割と多そうな気がしますからね。

 

やはり目標設定は緩めの方が、治そう治そうと意気込んでいるよりも、結果として治りやすいような気がします。